「なぜ部下が思ったように成長しないのか」「どうすればチームから信頼され、ついてきてもらえるのか」
マネジメントに携わる人なら、一度はこの壁にぶつかったことがあるはずです。
部下がついてこない最大の理由は、自分が部下のことを十分に知らないからです。
部下を育てたい、守りたい、尊敬されたいと願うなら、まず自分が部下にどれだけの関心を持っているかを問い直す必要があります。
尊敬や信頼は「知る」ことからしか生まれない
人間関係の本質は非常にシンプルです。
自分のことを何も知らない、知ろうともしない相手に対して、人は心からの敬意や信頼を抱くことはできません。
これは上司と部下の関係でも全く同じです。
上司が「部下をどう動かすか」ばかりに気を取られ、部下の価値観や人柄、求めていることに関心を持たなければ、部下側もこちらに関心や敬意を持ってくれることはありません。
逆に、部下から見た上司の側でも同じことが起きています。
評価されたい、チャンスが欲しいと願う優秀な部下ほど、上司のタイプや「何に喜びを感じるか」を観察し、それに合わせたアプローチをしてきます。
- 数字や成果を重視するタイプなのか
- チームの調和やプロセスを重視するタイプなのか
同じ提案や指示であっても、相手の関心に合わせてアプローチを変えるのはビジネスの基本です。
上司である私たち自身が、部下ひとりひとりの「関心」にどれだけ耳を傾けられているか、一度チェックしてみる必要があります。
響くアプローチは「相手の関心」の中にしかない
ここで、ある会社の部下から上司への提案で「ハッ」とさせられたというエピソードについてお話します。
チームの業務プロセス改善について、ある部下から提案を受けたときのことです。
それまでも他のメンバーから「このツールを導入すれば作業効率が上がります」「最新のシステムです」と何度も提案されていましたが、当時の上司は導入コストや運用の手間を考えてしまい、首を縦に振れませんでした。
ところが、あるメンバーのアプローチだけは違いました。
「〇〇さん(上司)、このツールを入れたい一番の理由は作業効率化ではありません。〇〇さんがいつも気にされている『若手の残業時間を削減して、チーム全体の離職リスクを減らす』ための仕組みがこれなんです」
業務効率化そのものではなく、「チームを守り、離職を防ぎたい」という上司の最大の関心事にピンポイントで響く伝え方をされた瞬間、上司は即座に予算の獲得に動くことを決めました。
提案内容自体は大きく変わりません。
変わったのは、「相手(この場合は上司)が今何に関心を持っているかを理解して言葉を選んだかどうか」、それだけです。
指示が伝わらない、部下が動いてくれないと感じるとき、私たちは知らず知らずのうちに「自分基準の言葉」で話してしまっていないでしょうか。相手に届けたいなら、相手の関心事に合わせた言葉に変換して伝える努力が欠かせません。
「具体的に知る」ことが最高のプレゼントになる
部下との信頼関係を深めるために、明日から実践できる具体的なアクションがあります。
それは、「相手を具体的に観察し、認める言葉を渡すこと」です。
単に「いつも期待しているよ」「頑張ってるね」といった抽象的な言葉をかけるだけでは、相手の心には届きません。たとえば、こんな言葉かけならどうでしょうか。
- 「〇〇さんは、いつも他のメンバーの業務状況まで目配りして、自分がいないところでもサポートしてくれているよね」
- 「〇〇くんのこの資料、数字の裏付けがしっかりしていてチームの判断スピードが上がったよ」
このように、「あなたの行いを具体的に見て知っている」という事実を言葉にして伝えること。
これこそが、部下にとって最も嬉しい承認、いわばプレゼントになります。
抽象的な褒め言葉は誰にでも使い回せてしまう分、部下の側も「本当に見てくれているのか」と半信半疑になりがちです。
一方で、具体的な観察に基づいた言葉は、他の誰にも当てはまらない「あなただけへのメッセージ」になります。
ここに、承認の質を分ける決定的な違いがあります。
「至らない上司」だからこそ、始められること
部下への関心が足りず、自分本位な指示ばかりしてしまっている上司は多いと思います。
もちろん完璧なマネジメントなど存在しません。
大切なのは、「自分はまだ至らない」と認めた上で、今日から少しずつ関心の向け方を変えていくことです。
関心を持つといっても、難しく考える必要はありません。
雑談の中で相手が何に興味を持っているのか耳を傾けること、日々の業務の中で相手がどんな工夫をしているのかを観察すること。
その小さな積み重ねが、やがて大きな信頼につながっていきます。
まずは「大切な部下の関心」に関心を持つ
マネジメントで成果を出すための法則は、突き詰めればシンプルです。
- 部下の価値観や関心事に興味を持つ
- 部下の行動や強みを具体的によく観察する
- 相手の関心・響く言葉に合わせてコミュニケーションをとる
全員に同じ対応をすることが平等ではありません。
一人の人間として部下に真摯に向き合い、関心を持つこと。
その積み重ねこそが、部下が自然とついてくる強いチーム作りの第一歩です。
まずは今日、目の前にいる部下が「今何に関心を持っているのか」を観察することから始めてみませんか。