多くの経営者や管理職が「良い人材が集まらない」「採用コストがかかる」という悩みを抱えています。
しかし、問題の本質は採用手法ではありません。
人が辞めない組織を作ることができれば、そもそも頻繁に採用活動を行う必要はなくなるのです。
離職を防ぎ、メンバーが定着する組織作りの鍵は、「上司の行動とあり方」にあります。
1. 「入り口は環境、出口は上司」
人が組織に入るときと辞めるときでは、重視しているポイントが全く異なります。
入社する理由(入り口)は環境:期待や好条件で人は集まる
人がその会社やチームに加わる(応募・入社する)ときに決めてとなるのは、外側に見える「条件や環境」です。
- 業界・職種の魅力:「接客が好き」「エンタメ業界で働きたい」「マーケティングに関わりたい」といった仕事内容
- 条件・制度: 給与が高い、残業が少ない、リモートワークができる、福利厚生が充実している
- 企業のイメージや規模: 有名企業、成長企業、オフィスがおしゃれ、アットホームな雰囲気に見える
求職者はまだ内部の人間関係を深く知らないため、「提示された環境や未来への期待」に惹かれて門をたたきます。企業側も採用段階では魅力的でポジティブな情報(=良い環境)を前面にアピールします。
出口は「人」:人が会社を去る最大の決定打は「人間関係」特に上司
一方で、入社した人が退職を決意する最大の理由は、待遇や仕事内容そのものではなく、「人間関係」です。
退職理由の建前としては「キャリアアップのため」「家庭の事情」などが挙げられがちですが、本音のアンケートなどで常に上位を占めるのは「上司への不満・不信感」「職場での人間関係」です。
どれだけ好きな仕事(環境)であっても、日々顔を合わせる上司から以下のような関わり方をされると、人は耐えられなくなります。
- 存在や努力を認めない(不承認): 「やって当たり前」と捉え、感謝や褒め言葉がない
- 減点主義・他人との比較: 「なぜできないのか」「〇〇さんはできているのに」と責める
- 感情的な不機嫌・嫌み: 休暇を取ろうとすると嫌みを言う、日によって言うことが変わる
- 上司自身の理不尽な働き方: 自分自身が休まず無理をして働き、部下にも見えないプレッシャーを与える
「この会社(環境)が好きで入ったけれど、この上司のもとではもう働けない」「この人のために頑張りたいと思えない」と感じた瞬間、人は離職(出口)を選びます。
2. 上司は「好き・嫌い」を逆転させる影響力を持つ
上司の関わり方一つで、メンバーの意識や成果は大きく変化します。ここでは2つの事例をもとに解説します。
【事例1】大好きな仕事(接客)を諦めて退職してしまう理由
ある若手社員は、人と接することやお客さまを笑顔にすることが大好きで、希望していたアパレル店舗の販売職に入社しました。職場仲間とも良好な関係を築き、仕事にやりがいを感じていました。
しかし、体調不良や家族の急な用事でどうしても有給休暇を取得するたびに、直属の店長(上司)から嫌みを言われ続けました。
「また休むの? 他のスタッフはみんなシフトに穴をあけずに頑張っているのに、なんであなただけそんなにワガママなの? 周りの迷惑を考えたことある?」
このように、休暇を取るたびに繰り返し非難や不機嫌な態度をとられた結果、社員は強いストレスを感じるようになりました。
そして最終的に、「あれほど大好きだった接客業」そのものを嫌いになり、会社を退職することを選びました。
ポイント:仕事への情熱ではなく「上司との関係」が退職を決める
この社員が辞めた理由は「接客業が嫌いになったから」ではありません。
たった一人の上司による「不承認」と「否定」の積み重ねが、仕事への情熱を奪ってしまったのです。
どれだけやりがいのある仕事であっても、上司の関わり方一つで部下を追い詰めてしまいます。
【事例2】大嫌いな仕事(営業)が得意になりエースへ成長する理由
ある新入社員は、数字に追われることや人と交渉することが大の苦手で、「本当は絶対にやりたくなかった営業部署」に配属されてしまいました。
最初は「一刻も早く異動したい」と落ち込んでいました。
しかし、新しく着任した上司の関わり方が彼の運命を変えます。
その上司は、契約が取れなくても「今日も元気に現場に出てくれただけで十分だ!」「相手の話をしっかり聞いて帰ってこられたね」と、まずは存在そのものや日々の行動を承認してくれました。
さらに、小さなアポイントが1件取れただけでも「すごい進歩だ!」と徹底的に褒め続けたのです。
その結果、部下は「この上司のもとでもっと成果を出したい」「営業って面白いかもしれない」と自発的に行動するようになり、毎日自主的に提案の勉強やロールプレイングを重ねるようになりました。
最終的には、苦手だったはずの営業業務で社内トップの売上を叩き出し、チームを牽引する絶対的エースへと成長を遂げました。
ポイント: 上司の「承認」が人の能力とやる気を覚醒させる
業務の得手・不得手や最初のモチベーションは関係ありません。
「今日も来てくれてありがとう」という存在の承認と、「小さな成功」を見逃さずに褒める姿勢があれば、苦手意識は自信へと変わり、人は自ら成長してエースへと化けるのです。
3. 部下が離れていく上司の無意識な「絶対 NG 行動」
部下が辞めていく職場では、上司が以下のような行動を無意識にとっています。
- 「代わりはいくらでもいる」という態度をとる
「お前がいてくれないと困る」というリスペクトが伝わらない職場から、人は離れていきます。
- 他者と比較して「できない理由」を詰める
「みんなやっているのに、なぜお前だけできないのか」という減点式の指摘は、部下の自己肯定感を破壊します。比較すべきは他者ではなく「その人自身の過去」です。
- 自分自身が休まず、周囲にも我慢を強いる
上司自身が無理をして休まず働いていると、部下が休みを取る際になんとなく罪悪感を抱かせることになります。
結果として「この上司のもとでは長く働けない」と感じさせてしまいます。
4. 人が辞めない組織を作る「3つのアクション」
部下が生き生きと働き、離職率ゼロのチームを作るために上司が実践すべきアクションは非常にシンプルです。
- 「存在の承認」を徹底する
- 成果が出た時だけでなく、「今日も出社してくれたこと」「チームにいてくれること」自体に感謝し、「よく来たね」「いつもありがとう」と声をかけます。
- 加点方式で「できたこと」を褒める
- できない部分を詰めるのではなく、小さくても「できた部分」を見つけて褒めます。
人は認められることで自発的に成長しようとします。
- できない部分を詰めるのではなく、小さくても「できた部分」を見つけて褒めます。
- 上司自身がしっかり休み、人生を楽しむ
- 上司が手本となって休日を取り、活き活きと働く姿勢を見せることが重要です。
「自分も将来あんなリーダーになりたい」と思えるロールモデルになることが、最大の定着率向上策です。
- 上司が手本となって休日を取り、活き活きと働く姿勢を見せることが重要です。
まとめ:笑顔と承認が組織を変える
組織を劇的に変えるのは、複雑な評価制度やマネジメント理論だけではありません。
上司が見せる「笑顔」と「相手の存在を認める承認」です。
「人は会社(条件)に入り、上司(人間関係)を理由に辞めていく」
優秀な人材を留め、強いチームを作るために改善すべきは、求人原稿の文句ではなく「日々の現場で見せるリーダーの笑顔と承認」なのです。
自らの働き方と関わり方を見直し、部下が安心して力を発揮できるチームを作っていきましょう。